サンローランとうたかたの日々。そして文学青年の先輩の思い出。

今日は、大好きな映画である【SAINT LAURENT 】をみていました。

 

 

イヴ・サンローランといえば言わずと知れた20世紀後半の天才デザイナー。

 その繊細さゆえに、麻薬に手を出したり愛人を作ったりして、彼はほぼ崩壊していたわけです。

 

『彼が彼でいるために払った代償を、この映画で描きたかった。』

 

この言葉は、DVDの特典のインタビューより。

サンローランが天才ファッションデザイナー、イヴ・サンローランであり続けるためにどれだけの苦悩があったのか。

 

そして、そんな彼を支え続けた恋人の献身的な愛情。そして数々の友の暖かい愛情。 

その描写が非常に美しい。間違いなく名作である。

 

『愛の力が一人の儚い人間の命を活かした。』

 

わたしは、サンローランの人生はその記録なのだと思っている。

 

それにしても、映画のなかのサンローランの退廃的な暮らしが非常に美しいこと!

 なんでだか、わたしはフランス人特有の退廃的な感性に惹かれがち…。

 

そして、今日はもうひとつ作品紹介を。

わたしが好きなフランスの退廃小説です。【うたかたの日々】

 

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 愛する妻が肺の病にかかって、どんなに手を尽くしても助けられず死んでいくのを待つだけの物語。

資産家で優雅な暮らしをしていた青年が、妻との束の間の幸せと引き換えに、お金も友人も何もかも失っていく。

 

とても有名な小説ですが、わたしは十代のころに岡崎京子さんの漫画でこのお話に出会いました。

小説を読んだのは、もうすこし後だったかな…。

  

この小説と漫画に関して、ちょっとした青春の思い出がある。

 

わたしが21歳のときのこと。

たまたま友人の紹介で知り合った大学の先輩がいて、『みんなでクリスマスパーティーをしよう!』と、その先輩を含む男女4人でわたしの部屋に集まった。

 

(忘れもしない、2010年の12月24日〜25日、クリスマスイヴからクリスマスの朝にかけてのこと。

 その1日は、魔法にかかったように楽しい1日だった。きっと面子が良かったんだろう。

みんなで鍋をして、お酒をたくさん飲み、最後にコンビニで買ってきたヴイエネッタを切り分けて食べ、そのまんまコタツでごろ寝する。

どこまでも、大学生の堕落したクリスマスパーティーってかんじだった。)

 

部屋に入って早々、映画や文学が好きな先輩はまじまじとわたしの本棚を観ていた。

 

名作ぞろいだな!と嬉しそうに眺めていたら、ふと、彼は『うたかたの日々』の小説と漫画を見つけてこう言った。

 

『僕は、この小説が一番好きなんだよ。ただ、小説が好きすぎて、岡崎京子の漫画は読めてない。』

 

って。

 

薄々気づいてはいたけど、この小説が一番好きという時点で、先輩は相当なロマンチストだ。

 

が、わたしもいわずもがな、かなりのロマンチストなので、彼の趣味には共感するものがあった。

 

それに、会って間もない後輩のわたしに、『うたかたの日々が一番好きな小説だ』とさらっと言える感性は素晴らしいと思ったんだよなあ。

 

いや、むしろ羨ましかった。

 

わたしなんて、この小説が好きだなんて人に言ったら、すごく弱い人間だと思われてしまうのでは…と、変に怯えていたから。

 

きっと、自分のなかのロマンチストで脆い部分を肯定したくなかったのでしょう。

 

だから、わたしは先輩のこの言葉が、6年経った今でもずっと忘れられないんだと思う。

 

この先輩は、数ヶ月後にヨーロッパの大学に入学することが決まっていた。

だからか、連絡先も交換しなかったし、その後はあまり会うこともなかった。

 

今思えば、わたしは彼のことがとても愛おしかった。

何よりも、自分の好きなものを素直に好きと言える勇気が愛おしい。そして繊細な自分の感性を大事に育てているところが好きだった。

(…というより、なんだか可愛いな、この人。と思っていたかもしれない。)

 

ヨーロッパに行くことが決まってなかったら、きっとわたしたちはもっと仲良くなれてたろうになあ…なんて、いまだに夢想することがある。

 

いまはどこにいるんだろう?

彼はずっとヨーロッパって活動したいって言っていた。その夢は叶っているのだろうか?

 

だとしたら、もう日本で会うことはほとんどないだろう。

けれど、それはそれでお互いに幸せなこと。喜ぶべきこと。祝福すべきこと。

 

ふとしたときに、心の中に暖かく広がる思い出の人がいるのは幸福なことだ。

 

会った回数なんて片手で数えられるくらいしかなかった、わたしの愛おしい先輩。

 

文学青年のあなたが、どこかで絵を描いている姿をわたしはずっと思い描いています。

 

生きてるうちにもう一度会えたら、きっと嬉しすぎて変なこと言ってしまうかもしれないけど…。

 それは高望みが過ぎると思うので、ただ先輩の幸せを願っています。

 

(こんなふうに時空を越えて愛されていることを知ったら、ロマンチストなあなたはきっと喜んでくれるんじゃないかな。)