何一つしてあげられなかったけれど。

今日は、昨年亡くなった友人の絵を観に、埼玉県立近代美術館へ行きました。

絵を観終わって外に出ると、とても綺麗な月が空に浮かんでいた。

ああ…、1日が終わろうとしている。

あなたはベネチアで野宿をしちゃうくらい奔放なところがあったけど、暗闇の中から眺める世界は美しかったのかな?

わたしはいつもね、
暗闇のなか、木々を掻き分け草むらに寝転び、地面からじっと、外の景色を眺めるあなたを想像しているよ。

そこから見えたであろう景色と人間たちの様子を思い描きながら、あなたが残してくれた、たくさんの美しい絵を想う。

そうすると、他では感じられない、ピンと張り詰めた気持ちになるんだ。


何度みても、あなたの絵の前では緊張してしまう。

何度も何度も、あなたを想って泣いてきたのに、いざ絵の前に立つと、涙がぴたっと止まってしまうの。

だけどその代わり、今日は美しい月がわたしの涙を受け止める器になってくれたよ。

天気がよくて、気持ちいい風が吹く今日という日に、あなたの絵が観れて本当に嬉しかった。


わたしには、あなたのためにしてあげられたことなんて何一つない。

そして、あなたがこの世界から居なくなった今でさえ、わたしがしてあげられることなんて何もないんだ。

だけど、あなたは間違いなく、わたしの中でずっと美しい景色を見せ続けてくれるから、

今度はわたしがこれから出会うであろう誰かに、その景色を見せてあげられたらいいなと思う。


わたしに、愛を教えてくれてありがとう。

もう少し肌寒くなったころに、またもう一度会いに行かせてください。

その時も、また今日のように美しい月が見れたらいい…。


それじゃあ、

また。