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アイデンティティは、「あの神」を隠す装置

Identity (アイデンティティ)の超・分かりやすい日本語解説があったので、引用してみます。(安冨歩『ありのままの私』より抜粋)

 

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同一であること。同一性。一致。
同一人であること。本人であること。正体。身元。
独自性、主体性、本性。
帰属意識
恒等式

 

これらの意味をひとつの言葉で括るのは、日本語としては意味不明です。
特に「同一」であることと、「独自性」と「帰属意識」とが同じ言葉というのは、わけがわかりません。(中略)
そして散々考えた挙句、どうやらユダヤ教キリスト教といった、一神教の「神」という言葉を隠すための装置なのではないか、と思うようになりました。

一神教では、神は、あの神、しか認めません。共に信者であるなら、「同じ」「同一の」神を信じているはずです。
「同一の」神を信じるなら、つまり、信じている神が互いに「一致」するなら、○○教徒という同じ集団に「帰属」しているわけです。
一神教の信者の「本性」は、あの神だけを信じる、ということです。
そして各人の「本性」はその神から与えられるわけで、その「本性」に、その人自身のあり方が「一致」していたら、それはその人「本人であること」あるいは「同一であること」が確認できます。
その人が、その本性に一致しているなら、その人は「独自性」を示しており、「主体性」を確保しています。
恒等式」というのは、等号の左右の式の値が常に「一致」している式、という意味です。

 

(中略)つまり、この言葉は、一神教の神、を前提とした概念を表しているのです。

 

(中略)つまり彼ら(一神教の信者)が「アイデンティティ」というとき、暗黙のうちに「あの神」を想定しているけれど、それは口にしないのです。

なので、このような文化的前提を置いていないヨソモノには、わかったような、わからないような謎の概念になります。

 

(欧米の美術作品を観るとき、この『アイデンティティ』のニュアンスをちゃんと理解していないと、中身のある鑑賞なんてできっこないと、わたしはずっと思っていました。

 

でも今まで生きてきて、ここまで分かりやすく日本語にしてくれた本に出会うことがなかったから、ずっとモヤモヤしてたんですよね。もう少し早くこの本に出会いたかったな…😭)

 

そういえば、昔サカナクションの曲で「アイデンティティ」というのがありました。

 

 

アイデンティティがない自分自身について思い悩む人の曲なのですが、最終的には「中学生の頃の純粋な自分にこそ本当の自分らしさがあった」というオチなのです。

中学生の自分にアイデンティティを見出してたら、今後どうやって社会のなかで生きていくんだ!?とツッコミたくなりますが、こういう曲が流行るのが日本、つまり『ネオテニー・ジャパン』たる所以なのだなとしみじみ思ったのでした。

ポップミュージックも現代アートも、抱えてる問題はさして変わらないということなのでしょうか。