人を好きになること。

 

好きな人が、一人で歩くのを見た。

 

いつもの足取りで、いつもの歩幅で、後ろ姿は小さくなる。

 

あっという間に人混みに消えて、

あの人はわたしの姿を見ることなく、一日を過ごすことになる。

 

 

好きな人と、一緒に歩く夢を見た。

 

夢のなかで、わたしたちは向かい合って、わたしの眼があの人の眼に映ってた。

夢のなかで、美しいその笑顔をわたしにくれた。

おかしいな、生きている世界ではあの人の笑顔なんてみたことがないのに。

 

夢のなかで、わたしたちはゆっくりゆっくり、一緒に歩いていった。

 

わたしはあの人の耳元でささやく。

 

「わたし、あなたのことが好きなんです。」

 

少しいたずらっぽい声で

口元に笑みを浮かべながら。

 

「俺も好きだよ。」

 

と、あの人はは笑ってわたしに言う。

 

わたしはまたあの人の耳元でささやいた。

 

「あなたがわたしのこと好きなわけないじゃない。」

 

そこで夢が覚めた。

 

ああ、なんでわたしは夢の中でさえ、

人の愛情を否定しているんだろう。

 

「わたしが愛した人は

わたしのことを愛したりしない。

 

本当は愛されたくなんかない。」

 

心の奥の方で転がってる言葉が溢れて、

目が覚めてからずっと苦しかった。

 

 

今日はこの世界で、あの人の後ろ姿をただ見ていた。

 

わたしはいつもあなたの姿を探して、

夢のなかでやっと会って、

それでもわたしたちが愛し合うことはない。

 

 

 

片手で数えられるくらいしか、ちゃんと話したことがないわたしの好きな人。

 

「あなたの姿をみたあとで、通り雨が降りました。

雨が降ってくれてよかった、わたしのこの気持ちが洗い流されるみたいだから。」

 

わたしは、

なんであなたのことが好きなのか分からない。

 

だから夢のなかでいいから教えてほしい。

 

あなたは一体誰なのですか?